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ルールの運用 [スポーツ]

北京冬季オリンピックが、メダル以外の話題でいろいろ巷を賑わせている。たとえば、高梨沙羅選手を傷心の淵に追い込んだスーツ規定違反の問題。スキージャンプ混合団体でいきなり大量失格者が出たので舞台裏で何かが起こったのは間違いないが、規定そのものが急に変わったはずはないから、判定者の裁量がもたらした混乱のようである。

ふつうの職場でも、経理に異動してきた職員が規定遵守の鬼で、昨日まではギリOKだった事案に次々とダメ出しを突きつけるようになった、というようなことはある。ルールが客観的でも運用するのは人間だから、主観的な幅が生じる。その幅を完全にゼロにすることは難しいとは言え、なるべく曖昧さが小さく済むように運用の仕方を細かく決めておくことは、公平性確保の上では大事だ。その点、スキージャンプのスーツ問題はどうだったんだろう。オリンピックのジャッジが経理部の職員よりはるかに厳しい中立性を要求されることは言うまでもない。

snowboard_halfpipe.pngハーフパイプで金メダルを獲った平野歩夢選手の「決勝二回目」問題も物議を醸した。「史上最高」のルーチンをこなしながらスコアが理不尽に低く、ジャッジがブーイングを食らった。ハーフパイプでは6人のジャッジが点数を付けて、最低点と最高点を除いた4人分の平均点でスコアが決まる。平野選手の決勝二回目のスコアは96,92,90,89,95,90で、96点と95点をつけたスウェーデンと日本のジャッジを除く4人は軒並み低めの評価だ。全く同じルーチンで望んだ三回目は、 98,95,96,96,97,95と全員が評価を上げ平野選手の優勝が決まった。私はハーフパイプの技術論には何の知識もないが、数字だけから見る限り二回目は1人や2人のジャッジの不可解判定というわけではなく、4人が一致して評価を下げた「何か」があったはずだ。それが何だったのかはちゃんと公に説明されるべきだ、というのは平野選手自身が試合後に述べたことでもある。

ROCのワリエワ選手のドーピング違反が発覚したが、年齢や問題の検体採取時期を理由に出場続行は許された。当然フィギュア界隈は騒然としている。キム・ヨナさんはインスタに漆黒の画像とともに抗議の声を投稿した。
Athlete who violates doping cannot compete in the game. This principle must be observed without exception. All players' efforts and dreams are equally precious.
敢えて個人を名指しをしなかった批判の矛先はたぶん、疑惑の選手本人よりもその背後でうごめく黒く巨大なシステムに向けられているのではないか。15歳のワリエワ選手が独断で暴走し禁止薬物に手を出したとは考えにくい。選手生命が始まるころにはすでにシステムの歯車に飲み込まれている、暗い宿命。キム・ヨナさんの最後の文章「全ての選手の努力と夢は等しく貴い」には、二重の告発が込められているような気がしてならない。

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