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第三の候補者 [海外文化]

america_daitouryousen_woman.png刻一刻と変わる米大統領選の動向をネットでチェックしているとき、接戦州で得票率48.9%対49.5%のような数値をよく見かけた。差が小さいのはさておき、なぜか数値を足しても微妙に100%に届かない。よく見ると、残る1から2%前後の票を獲得している第三の候補者の名前がある。リバタリアン党という独立系政党から出馬していたジョー・ジョーゲンセン(Jo Jorgensen)なる女性だ。

彼女の得票率はもちろん共和党・民主党の各候補に肩を並べる水準には程遠いが、泡沫候補の中ではちょっとした存在感を見せている。しかも、バイデンとトランプ両氏の得票率差がコンマ数%という州では、1%台の数値は決して小さくない。党名から察するに小さい政府指向の政策がウリのようで、一見共和党と親和性が高そうなのでトランプ票を食っているのではないかと気になった。つまり、仮にジョーゲンセン氏が立候補していなければ、バイデン候補が競り勝った接戦州でトランプ大統領が逆転し、最終的な結果すら変わっていた可能性もあるのではないか?

と思って調べると、案の定そんな記事が英国ガーディアン紙に出ていた。結論としては、大概の専門家はジョーゲンセン候補が大統領選の動向に影響を与えたとは見ていない。二大政党の現状を見限った有権者がリバタリアン党支持層を構成しており、彼らはバイデンにもトランプにもシンパシーを感じない。ジョーゲンセン氏に票を投じた人たちの多くは、仮に彼女が出馬していなければ投票にすら行かなかったと考えられているようである。

リバタリアン党は、個人の自由に対する公権力の介入に徹底して反対する。だから政府の銃規制にはもちろん反対だが、中絶や同性婚も同じように選択の権利として擁護するので、共和党的な宗教倫理観とは相容れない。国民皆保険制度を認めない姿勢は共和党的だが、移民政策に寛容な点(移住は個人の権利と考える)は民主党的である。そんなリバタリアニズム(自由至上主義)の主張は論理が潔く一貫しているが、結果的に左右両端が尖りすぎてしまい保守からもリベラルからも受け入れられない。立場の左右を問わず、圧倒的大多数の人々にとっては、教条的な論理を問い続けるのは疲れる。理屈で割り切れなくとも、各々慣れ親しんだ価値観を大事に慈しんで生きるほうが、ずっと心地よいのである。

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