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G7とオリンピック [政治・経済]

G7が東京オリパラにお墨付きを与えた、という話をよく聞く。嘘ではないが、たぶん日本以外ではほとんど報道されていない。もともと、オリパラはG7の関心事からは程遠い。25ページに及ぶG7コミュニケの一番末尾で、おまけのように2行ほど言及されているに過ぎない。安心安全の大会とかウイルスに打ち勝った証とか、どこかで聞いたフレーズがそのまま英語化されているので、日本政府が提案した作文がとくに推敲もされずそのまま載っている気配がある。どっちでもいいことにはとりあえず賛成しておいて得点を稼ぐのが政治の基本とすれば、菅総理以外のG7首脳にとって東京オリンピックは「やりたければやれば」程度の温度感だったのかなと推測する。

CornwallUK_graph.jpgそのG7が開催された英国コーンウォールで、いま新型コロナ感染が急拡大しているという。少し前から、イギリス全土で感染者数がじわじわぶり返していた。ワクチン接種が進んでいるとは言え、生活をもとに戻すペースを少し急ぎすぎたのかも知れない。社会全体の接種率が上がっても、(若年層など)未接種者の多い母集団が集まって盛り上がれば、容易に感染の温床になり得る。それはさておき、コーンウォール地方の感染拡大率はとりわけ顕著で、現地の人口あたり感染者数は英国の平均水準を超えた。これは、大規模な検査が始まった昨年5月以来初めての事態だと言う(右上グラフで赤線がコーンウォール地方、青線が英国平均。コーンウォールの新規感染者数は直近で跳ね上がっている。BBCサイトより)。

コーンウォールの感染拡大が果たしてG7と関連があるのか、見解が割れている。G7では各国随行員や警備スタッフやマスコミを含め、相当数の人が国内外から集結していたはずで、高リスクなイベントであったことは疑いない。実際、メルケル首相の警備要員の一部が滞在していたホテルのスタッフから感染者が出て、SPが自主隔離を余儀なくされた。感染者が見つかるのは検査体制が徹底している証と見ることもできるが、仮に体制が鉄壁でも検査精度は完璧ではない。当局はG7が感染源であった証拠はないとしており、実際のところ真相はわからないが、検査の網から漏れるウイルスはそもそも「証拠」に残らない。証拠の不在は不在の証拠ではないのである。

コーンウォールの案件は、来たるべきオリパラ感染対策の縮図を見ているようだ。オリンピックが始まって感染拡大が加速したら、「オリンピックが原因という証拠はない」と組織委がいかにも言い出しそうではないか。既に東京でリバウンドが始まったいう話もあるが、オリンピック開始前から新規感染者数が増加傾向にあれば、裏を返せばオリンピックが悪いわけではないと言い逃れができる。オリンピックの開催者側にとっては、予め徹底的に感染を抑え込んでしまうより、多少は手綱を緩めておいたほうがむしろ好都合ということになる。6月のうちに緊急事態宣言を解除したのはそんな思惑があるのでは、と邪推してみたくなる。

ウガンダ選手団で入国時に一人陽性者が見つかった。これ自体は、検査ルーチンが回っている証左である。しかし濃厚接触者の判定をする前に関係者を普通に移動させてしまい、その中からもう一人陽性者が出た。これは明らかに対策運用の不備だ。天皇陛下が不安を表明されるのも無理はない。今後次から次へと選手団がやって来るが、本当に水際の「おもてなし」は大丈夫なのか。1万人+五輪貴族の話とか、酒販売をやると言ったりやめると言ったり、組織委はスポンサーのおもてなしだけは抜かりがない。ゴマすりも結構だが、もっと大事な仕事はちゃんとやってほしい。

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