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スーパー五輪ブラザーズ [フィクション]

coin_medal_gold.png20XX年、東京で再びオリンピック・パラリンピックが開催されることとなった。しかし折り悪く、毒キノコによる疫病が世界に蔓延し、オリンピックの開催形態に大幅な見直しを余儀なくされる。侃々諤々の議論の末ようやくその方針がまとまり、IOC会長と日本の首相による共同会見が催される運びとなった。以下はその全容である。

司会「みなさま、お集まり下さりありがとうございます。では、まずIOCバッカ会長からオリンピックの新たな形式についてご発表いただきます。」
IOC「このようなキノコ禍の状況ですので、大会の大幅な簡素化が必要と決断しました。そこで、思い切ってオリンピックを一種目だけに限定することとしました。」
(会場ざわつく)
司会「一種目といいますと?人気種目を残すなら、100m走か何か?」
IOC「いえいえ、公平を期してすべての種目を取りやめ、全くの新種目を設けます。ルールはとても簡単ですよ。選手には、拳を頭上にまっすぐ突き上げ、その状態でジャンプしてもらいます。」
司会「・・・。それだけですか?」
IOC「いえ、箱が空中に浮いていまして、選手が拳で箱を叩くと金貨が飛び出す仕掛けなんです。コインを一番たくさん叩き出した人が、金メダルです。どうです?盛り上がるでしょう。」
司会「それなんだか見覚えが。もしかして、土管に潜り込んだり、甲羅を蹴飛ばしたりするヤツですか?」
IOC「ええ、障害物競走も検討しました。が、舞台装置が大変なので採用しませんでした。」
司会「叩き出したコインは、選手への賞金になる仕組みなんですね?」
IOC「まさか。コインはもちろん、IOCが全額回収します。つまるところ、オリンピックはカネを産み出すことが価値なのです、私どもにとっては。」
司会「はあ。では、会場から質問をお受けします。はい、どうぞ。」
記者「キノコ禍再拡大の懸念から、東京は再び緊急事態宣言下にあります。このような状況下でのオリンピック開催を、どうお考えですか?」
IOC「私たちは緊急開会宣言と題して、開会式に臨席するIOCファミリーで乾杯する企画を温めてますよ。」
記者「スカ総理はいかがお考えでしょうか?国内のワクチン接種率はまだ10%台の状況ですが。」
(筆者注:記者が言及したのは、毒キノコを体内でスーパーキノコに変質させ無敵の抗体を作る、新しいワクチンのことである。)
首相「私は、安心安全のオリンピック開催に向け、全力を尽くしてまいります。」
司会「では次の方、質問どうぞ。」
記者「首都圏の無観客開催を受け、想定されていたチケット収入は大幅な減収が予想されます。赤字の穴埋めに、多額の税金が投入されるのでしょうか?」
IOC「個人的には、皆さんにはご自宅からご覧いただいた方がスポンサーの放送局は喜びますので、無観客のほうが良いと初めから思っていました。」
記者「えっと、総理に伺ったのですが。」
首相「私ですか?とにかく、安心安全の大会にしてまいります。」
司会「では、次の方。」
記者「IOCやスポンサーは無観客でも収益が保証されるかも知れませんが、キノコ禍のせいで開催国・開催都市は持ち出しばかりで大損ですよね。このようなオリンピックのあり方について、どのようにお考えですか?」
IOC「オリンピックはIOCのビジネスですから、我々がガッツリ儲かるよう契約するのは当然です。開催都市を脅したりはしませんよ。選んであげた途端みんな有頂天になって、契約に署名するときは子犬のように聞きわけが良いですからね。今回は想定外のキノコ禍のため、いつもより開催都市の弱みが目立ってしまいましたけど、これまで多額の出費に苦しんだ都市は東京だけではありませんよ。」
記者「何の気休めにもなりませんが。」
IOC「ははは。でも、東京には感謝していますよ。前回のオリンピック閉会式でスカ首相の前任者がゲームのキャラに扮して登場してくれたおかげで、今回新種目のアイディアが生まれたわけですから。」
司会「スカ首相、いかがですか?」
首相「ですから、私としては先程申しましたとおり、安心安全の大会に尽力してまいります。」
司会「では、最後に一言お願いします。」
IOC「選手の皆さん、ご健闘をお祈りします。皆さんのおかげで、私は老後も良い暮らしができそうです。IOC幹部と大口スポンサーを代表して、深くお礼申し上げます。」
首相「私としましては、安全安心の・・・えと、安心安全か。安全安心?安心安全?あれ、どっちだったっけ?」
司会「ありがとうございました。では皆さん、どうかステイホームでテレビをウォッチしながらアスリートたちにエールをシャウトしオリンピックをエンジョイして下さい。司会の湖池ユリ子でした。」


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